専業主婦、働く②

初日から、ゲ、マジで⁉️の連続・・

晴れて就職した私。

大して緊張感もない。

ケーキ箱に詰めて、売ればいいんでしょ。

それくらいに考えてたし、多くの場合それでいいんじゃないだろうか。

しかし、この店はちょっと違う・・・。

朝、恐る恐るドアを開く。

「お、はようございま〜す・・・」

「あ、ロッカーはこっちです。制服のシャツ、渡します」

とのことで、休憩室と思われる部屋へ。

マジか・・・

休憩室でもロッカー室でもなく、ここは倉庫じゃないか。

8畳〜10畳くらいと思われる部屋の両脇には、ダンボールの山、山、山・・・

足元にはギリ人が通れる程度の細長い空間。一応カーペットになっていて、靴は脱いで上がるようになっているので、元々は確かに休憩室として設られたものなのだろう。

部屋の一番奥に、ロッカーがある。8人分くらいはあるようだ。

その一つを指定され、前の人のだろうか、鍵にはキーホルダーのようなものが付けっぱなしだ。

「鍵は閉めても閉めなくてもいいです」

という謎の説明とともに、制服の白いスタンドカラーのシャツを渡される。

これは一応ちゃんとクリーニングされたもののようである。ホッ。

エプロンも、クリーニングされたものを渡される。

黒のパンツは自前である。これはこれで構わないのだが。

次にタイムカードの説明。

入り口付近に積まれた段ボールの上に、新しいタイムカードがたくさん入った箱が、まるでそこが定位置かのように置いてある。そこから1枚を取り出し、

「名前書いて」

あ、自分で書くんスね。

用意しておいてくれたわけじゃないんですね、別にいいけど。

名前を書いて、いざタイムカードの刻印機っていうんですかね、それに差し込もうとしても・・・ダンボールと、あとゴミが溢れそうなゴミ箱が足元にあるせいで、そこまで手が届かないんですけど。

「すみませんね、散らかってて」

店主が一応申し訳なさそうに言う。

私はグイグイと、ダンボールとゴミ箱の間を押し分けるように足を滑らせ、

ジジッ

ようやく刻印。

定刻よりだいぶ過ぎでしまったが、その場で店主が手書きで訂正してくれたのでそこは安心。

「すみませんね、こんな散らかってて」店主はまた言う。

「あはは・・・」

まさか、ここで皆さん休憩してるんじゃないですよネ・・・

とりあえず、見なかったことにしよう。

いや、そこでシャツに着替えたんだから、しっかり見たんだけど。

やばい、かも・・・

「着替え終わったら来てください」

既に一抹の不安を覚え、カーテンもない、隣家から丸見えの窓ぎわでシャツに着替え(中には普通のTシャツを着込んできたのでセーフである)、いざ、出陣である。

ドアを開けるとまず厨房がある。

甘い匂い。お菓子度100%である。

店主に着いていくすがら、若いパティシエ?弟子?が男女2人いた。

向こうから、挨拶してくれる。

まずは女性から。私もすかさずご挨拶。若い。でもいい感じである。

男性も。こちらもいい感じである。

私は歓迎されてるのだろうか?こんなおばちゃんでも?

誰でもいいから来てほしい、そうじゃないと私らの残業が減らんのだ、という、藁にもすがる思いなんだろうか。

挨拶はできたものの、店主は「いいから早く」と言わんばかりである。

ちゃんと紹介もしてくれないのね。

彼らがどんな人なのか、バイトなのか社員なのか、説明する気はないらしい。

まだ私を、

今日すぐ辞める可能性がある人、くらいに思われてんだろうか。

ま、それもそれで仕方ないのか。

どうでもいいけど、店主は、怪しい。

私の経験上の普通と、違うぞ。

初日はそんな感じで始まった。

ケーキ販売の仕事なんだから、早速ケーキ販売の仕事を教えられるのかと思ったら、どうも様子が違う。

まずは下働きから

とでも言わんばかりの仕事を、まずさせられる。

最初の仕事は、

小さく切られた厚紙に、定規を使って折り目をつける、

という仕事である。

はあ

試されてんのか?

これ、できるかな?と。

その時は、

あ〜今、教える時間がないのかな、だからとりあえずこれでもやっといてってことなのかな、まあ、楽だし私は構わんが・・・

くらいに思ってたけど。

よくよく考えると、おかしかったな。

次の仕事は

封筒づくり

内職感100%である。

でも別に私は構わんかった。これで時給1200円かあ、ラッキ〜

くらいで。

(続く)

コメント

タイトルとURLをコピーしました