不穏な空気の中、とりあえず働く・・・
初日は厚紙折りと、封筒作りだった。
新入りの弟子みたいだな・・・
でも、ラクはラクだ。
ラクなのがいちばん、と考えがちな私は、深くも考えず、その後も言われたことだけやっていた。
2日目だっただろうか、新たな“弟子しごと”が加わった。
『保冷剤づくり』である。
保冷剤づくりとは、まず、凍ってない保冷剤を“きれいに平らに”してから、
金属製の大きな箱に、きれいに並べていきます。
そしてそれを冷凍庫に持っていき、凍らせます。
凍ったものは、今度はそれをお店のロゴ入り紙ナプキンできっちり包みます。
そしてそれを店頭の冷凍ストッカーへ。
うーん、なかなかの下働き感である。
でも、ラクはラク。ま、いっか・・・。
あれ、私、販売員として雇われたんじゃなかったっけ。
販売の仕事、さっさと覚えなくていいんスかね?
深まるばかりの謎。
こんなことを数日やって、少しずつわかってきた。
やっぱりこれは本当に“下働き”だったのだと。
下働きを、やらせたかったのだと。
それを証拠に、注文が入ったケーキを、
練習がてら、入れようと思ったら、
『やるの?』
と。
やるの?うん、やるよ。だって練習しなきゃできるようにならんじゃん。
これでわかった。
早く販売の仕事を覚えたがる私に、
君にはまだ早いよ
ということを示したいらしい。
アホか
販売員、今ひとりもいなくて困ってるんですよね?
いないと、製造に携わってるパティシエやシェフ(店主)が手を止めて接客しなきゃならないから、
仕事が捗らず、大変なんですよね?
じゃあ、早く私に販売の仕事教えれば?
さっぱりわからん
ヤバい、ヤバい奴がいる・・・
どうも、最初から怪しいと思った。
販売の仕事ができるようになるまで、1ヶ月以上かかるみたいなことを言っていた。
まさか、と思っていたが、こういうことか・・・
それまで、下働きさせようと。
恐ろしき、職人の世界。
この上なく、非合理的。
というか、頭悪い・・・
もうすでに、私の中では、辞めることは決まっていた。
(続く)
コメント