専業主婦、働く③

不穏な空気の中、とりあえず働く・・・

初日は厚紙折りと、封筒作りだった。

新入りの弟子みたいだな・・・

でも、ラクはラクだ。

ラクなのがいちばん、と考えがちな私は、深くも考えず、その後も言われたことだけやっていた。

2日目だっただろうか、新たな“弟子しごと”が加わった。

『保冷剤づくり』である。

保冷剤づくりとは、まず、凍ってない保冷剤を“きれいに平らに”してから、

金属製の大きな箱に、きれいに並べていきます。

そしてそれを冷凍庫に持っていき、凍らせます。

凍ったものは、今度はそれをお店のロゴ入り紙ナプキンできっちり包みます。

そしてそれを店頭の冷凍ストッカーへ。

うーん、なかなかの下働き感である。

でも、ラクはラク。ま、いっか・・・。

あれ、私、販売員として雇われたんじゃなかったっけ。

販売の仕事、さっさと覚えなくていいんスかね?

深まるばかりの謎。

こんなことを数日やって、少しずつわかってきた。

やっぱりこれは本当に“下働き”だったのだと。

下働きを、やらせたかったのだと。

それを証拠に、注文が入ったケーキを、

練習がてら、入れようと思ったら、

『やるの?』

と。

やるの?うん、やるよ。だって練習しなきゃできるようにならんじゃん。

これでわかった。

早く販売の仕事を覚えたがる私に、

君にはまだ早いよ

ということを示したいらしい。

アホか

販売員、今ひとりもいなくて困ってるんですよね?

いないと、製造に携わってるパティシエやシェフ(店主)が手を止めて接客しなきゃならないから、

仕事が捗らず、大変なんですよね?

じゃあ、早く私に販売の仕事教えれば?

さっぱりわからん

ヤバい、ヤバい奴がいる・・・

どうも、最初から怪しいと思った。

販売の仕事ができるようになるまで、1ヶ月以上かかるみたいなことを言っていた。

まさか、と思っていたが、こういうことか・・・

それまで、下働きさせようと。

恐ろしき、職人の世界。

この上なく、非合理的。

というか、頭悪い・・・

もうすでに、私の中では、辞めることは決まっていた。

(続く)

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